灰色パーカに 水滴ひとつ 見上げれば 黒い龍 巨体を風になびかせて 大粒の涙 こぼしていく 黒く浸食されていく袖に 視線を戻し 歩みを止める 独特の匂いが呼び起こす あの日の記憶 心の湖に落ちた 墨汁一滴 みるみるうちに広がって 濁って 淀んで もがけばもがくほど戻らない 怯えた魚が暴れて 底に沈んだ泥までも巻き上げる 激しさを増す 黒龍の泣き声に呼ばれ フードを外して 右足を踏み出す 灰色の世界で 探し続けている 見失った宝玉を あたたかい光を