髪切虫
作詞 薄明一座
泣くのが嫌で 長い髪を切る
涙の代わりに 黒い髪落ちる
このまま涙と同じように 無くなればいいのに
ずっとずっと地面の上で 悲しみと一緒に残る
きっと髪が足りないんだ
涙がこぼれてくるんだ
もっと もっと 髪を切らないと
私は髪切虫
小さな手で顔を隠しても
複眼が彼の面影を見つけてしまう
私は髪切虫
目蓋がないから見ないなんてできなくて
大きく口を開けた
忘れたくて 長い髪を切る
思い出をそっと 肩から落とす
落ちた髪の数だけ 涙が消えても
ずっとずっと心の中の 傷跡は消えない
きっと髪が足りないんだ
涙が溢れてくる
もっと もっと 髪を切らないと
私は髪切虫
今日も木の中に隠れて
触覚に彼を感じさせないようにする
私は髪切虫
あるはずのない目頭に残る思い出が
大きく口を開けて
憑かれたように髪を切る
何度も何度も髪を切る
でも 髪には思い出が沁みこんでいるから
あぁ 匂いが立ち上る
きっと髪が足りないから
泣きたくない 泣きたくない
もっと もっと 髪を切らないと
私は髪切虫
全ての複眼が泣いてる
触覚には思い出しか感じない
私は髪切虫
大きく口を開けて叫ぶように鳴いて
一房髪を切った
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