少し感じてみて　音に触れて　脳で掻き分けてみて


仕事を終え　帰宅してからもうすぐ22時
テレビゲーム　起動してあぐらかいて　さぁgame start!

もうすぐ三十路だってのに子供の頃と変わらない僕
なぜか黄色いコンポジット端子が突然外れた

音は聞こえるよ　でも何も見えないよ
なんか不安だよね　でももし僕の身に起きてたら…

★
目を閉じて　立ち止まれ　この一瞬を脳で掻き分けてみる
耳をすませ　耳をすます　微かな声が重なり合ってざわつく
音と音を繋ぎ会わせて　周囲の状態を作り出す
でもまだ全体が完成しない　今の僕では完成しない
Ah すごく怖いよ


ある日突然目の前が真っ暗になる
そこは原宿の歩行者天国の歩道

それは一斉に歩き始まった7秒後のことだった
目を開こうともがきながら人とぶつかりながら前に進む

服の擦れる音　コツコツと歩く音
ざわつく声を　耳の奥で処理し始める

★
耳に手をあて　立ち止まれ　この一瞬を脳で掻き分けてみる
大丈夫だ　大丈夫だよ　目は開かなくたってまだまだ生きてる
耳の奥の神経を尖らせて　周囲の状態を作り出す
これが人の耳の能力なのか　僕は少しだけ安心した


少し感じてみて　音に触れて　脳で掻き分けてみて

僕は１つだけ　機能を失いました
でもまだ生きてる　生きてることには変わりない
まだまだ人生は長いさ　今の僕に出来ることをやろう

★
目は閉じた　立ち止まり　この一瞬を脳で掻き分けてみた
耳をすます　耳をすませばいつでも　優しく声かけてくれる君が側にいた
音と音を繋ぎ会わせて　周囲の状態を作り出す
でもまだ全体が完成しない　今の僕では完成しないけど

あなたがここに居ることと　あなたの笑顔だけは
Ah 目に映る


ここは狭い狭い病室　僕の寝るベッドの隣から
君の声が聞こえる

怒ってる　泣いてる　笑ってる　はしゃいでる
今の僕ならもう　全部分かる

目の奥で形になってる