見渡せばどこまでも路面
排気音を響かせて中古車が走る
古い過去を乗せたまま

風を巻き起こし
僕を追い越してゆく
過去は後ろ窓から
僕を冷笑していた

通りかかった新車に飛び乗って
あの車を追いかけても
すぐに見失ってしまうから
僕は車を降りて
綺麗な花が咲く路肩を
ゆっくりと歩きだす

あの車からは見えるだろうか
この綺麗な花たちが
猛スピードの車内からはきっと
景色もあっという間に過ぎていくのだろう

急ぐ必要はないのさ
大事なものを拾い忘れないように
ゆっくりと今はこの景色を見ていたい

通り過ぎてしまってから
バックミラーで確認しても
それは逆さまに映し出されてしまう
だから僕は今この目で
隔たりのない景色を見ていたい

あの車に乗っていた過去が
後悔しながら引き返してきて
僕を乗せるためにドアを開く

それでも僕はこの足で
どこまでも歩き続けるよ
未来がずっと見守ってくれているから

あきらめた過去は車から降りて
僕の後ろに付いてきた
そして僕にこう言った
こんな景色を見たかったんだと