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「障害者でありながら・・・」「障害者にもかかわらず・・・」といった前置き無用のアーチストによる意欲的な作品が、全国から数多く届けられてきます。
障害者の自立を支援する事業をおこなっている社会福祉法人・東京コロニーが、アートの分野でも彼らの持っている才能を活かして収入に結びつけることを目的として始めた事業が、アートビリティです。 |
障害者の芸術活動を支援する団体は、世の中にたくさんあります。その中で、アートビリティの活動が他と一線を画しているのは、メディアで使用されることを前提として作品をセレクトしている点にあります。アートビリティの審査員が、従来の障害者芸術展で作品の審査に関わってきたような美術関係者ではなく、広告代理店などで活躍しているグラフィクデザイナーであるということもその特徴をよく表しています。
アートビリティの作品審査基準は、クライアントの希望にマッチするかどうか、そしてデザイナーの感性を刺激することができるかどうか、という点です。 障害の重さ、種類はもちろんのこと、描いた本人の輝かしい画歴も一切審査には影響されません。結果として、数々の作品展で賞を取った作家の作品が不合格となり、芸術性とは無縁のラクガキのように見える作品が合格してしまうことも多々あります。デザイナーの感性を刺激し、イメージや想像力を膨らませる作品であれば、たとえ子どもの描いた作品であろうともアートビリティでは必要とされます。逆に、いくらテクニックに優れていようとも、デザイナーやクライアントの感性を刺激しない作品は登録されません。 審査会には、ときどき外部のお客様が見学にみえることがありますが、「こんなにうまい作品でも落とされるのか・・・」といった、驚きの声が聞かれるのもよくあることです。 アートビリティの審査会は、作品の良い悪いを評価するのではなく、あくまでアートビリティにマッチする作品をセレクトする場です。 そしてこのことは、アートビリティが障害者の芸術活動を支援するための「運動」ではなく、所得支援を目的とした「事業」だということの証でもあります。 |
一方で、障害のある作家たちの芸術活動を支援することも、事務局には求められています。というのは、アートビリティが事業として成り立っていくためには、クオリティの高い作品がより多く集まっていくことが必要だからです。アートビリティにとっては、作家1人1人が、事業の大切なパートナーと考えています。
才能があっても、障害があるが故に、納期やクライアントの要望に応えるといった社会システムの中では、その力が発揮できない場合もあります。作家が自分のペースで自分の描きたいものを描き、それをアートビリティに登録することで作品が使用され、使用料が入ってくるといったアートビリティのシステムは、作家にとってはたいへん便利です。 作家がそのシステムを最大限に有効活用できるように、また作家が気持ちよく創作に打ち込めるよう、精神的なサポートをすることも事務局の大切な仕事の一つと考えています。 アートビリティの活動は、あくまで自分たちの範疇にマッチした作家を応援することであり、ささやかな支援にすぎません。ですが、自分たちの選んだ作家や作品には責任を持って正当な報酬を与えていきたいと思っています。アートビリティは、そんな考え方から生まれた、小さくても大きな可能性を秘めた事業なのです。 |