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死に損ないのブルース
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作詞 創想屋 詩子 |
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そこはある世界の縁 誰も居ない寂しい場所で
不思議な人と出会った 彼は穏やかに言った
ねえそこの君 俺はもう長くはないんだ
ここはひとつ良い事をしてみないか?
簡単なことさ少しの間 俺のうたを聴いてくれ
ここじゃ人と出会うことは滅多にないからな
ボウシを深くかぶった彼の表情からは
何も読み取れなかった 彼に笑う意味があるのか
びゅうびゅう鳴く風 僕らは小さな屋根の下
そして僕は彼の望みを叶えてあげることにした
〜死に損ないのブルース〜
ここまでなんとなく生きてきた 他人と比べれば薄っぺらい人生でも
世界でただ一人俺だけは好きだった そういう風に言えたらいいけど
生きることは素晴らしい 死ぬことはくだらない ならば
今生きてる素晴らしい俺はくだらないことを考えています
そもそも生きるってなんなんだ ただ呼吸をすれば良いだなんて
それだけじゃ切なすぎるような 人間無職で文句言うだけの俺にはさ
そこまでして生きる義理もないんだ だけど死ぬ程の悲しみもないんだ
何が欲しいかって何も要らない だけど大切なものなんて持ってない
せめて言葉に出来たら悔いはない このからっぽな感じ
ガキの頃をよく思い出す そういや夢もあったんだなあ
人の愚痴をよく言うアイツは うんうんと頷く俺をしりめに
愚痴ってた人のもとへ行きます 俺は全部黙ったままです
無様だとあざ笑ったアイツは そうなんだと頷く俺をしりめに
無様な笑い声で他人に縋ります 俺は黙って利用されます
何でも大袈裟なアイツは 現実のつまんなさをしりめに
面白さや怒りや悲しさを偽ります 多くの人は共感するでしょう
もの静かな悲しみはより深く落ちる そしてこの頃から顔が薄れていったんだ
泣きじゃくるあの人は励ましを求める 疲れた 疲れた ああ、疲れた
もしも俺が死んだなら 現実を目の当たりにして
死ぬことは恐ろしいんだと 身にしみて生きてください
もしも俺が死んだなら 日常に溶け込んで
あの日のうたが聴こえたら そっと俺を思いだしてください
もしも俺が死んだなら 残った俺の生きる分だけ
死ぬまでアナタは どうか末永く生きてください…
パチパチパチパチパチパチ
すまんな長くなってしまったよ 所でここは生と死の境目だよ
もうすぐ時間だし そろそろ抜け出さないとヤバいぜ
早くしないと俺みたいになっちまうぞ 出口はこっちだ
ほら、ついてきな この道を真っ直ぐいけば大丈夫だろう
ありがとう ずっと聞きたかったんだけど最後にいいかい
何で君はボウシをかぶってるの?顔がよく見えないじゃないか
俺には顔がないんだ 初めて会うのがこれでは
気味が悪いだろう? だから隠しているのさ
なんだ そんなこと気にしてたのかい
かぶってたら失礼じゃない ボウシとった方がきっと素敵だよ!!
そして二人は別れを告げた
ここ一番に大きな風が吹いて 彼のボウシは空に舞った
何もない彼の顔からは 通常なら目があるであろう位置から
沢山のしずくがこぼれ落ちていた 今日は風の強い日だったが
心なしか少しあたたかくなった気がした
ありがとう 俺もやっといく準備が出来たよ
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