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ランプ
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作詞 やみあがり |
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15歳の少年が自殺したって ニュースはその話を淡々と語る
あまりにも短いひとつの命の終わり
遠い地方の名も知らない少年に なにかしてあげられなかったのかなってのは
ただの他人行儀な同情
心療内科の待合室で少年少女を見て かつての自分を思い浮かべる
荒れ狂って燃えたひとつの命の過去
遠い昔の何も知らなかった僕が あの時命を投げ出さずにいられたのは
ただの臆病と自堕落
でもさ 世界が冷たいからって 世間に裏切られたからって
死ぬことが潔いとはどうしても思えないよ
温暖化とともに冷えていく人の心と もっと熱く生きろという要求の軋轢に
今日もまたひとつの若い命が散っていくのか
文明開化とともに廃れていく商売に ケリをつけようと石を投げてランプを壊すみたいに
追い詰めるものは大概が無自覚で強大だから その気迫に気圧されて命すら捧げたくなるけれども
臆病でも自堕落でも生きてゆく
若者よ どうか死ぬことと見つけないでくれ
マンガにあるような青春じゃ無かったけれど 悪いことばかりでもなかった
今でも連絡をくれる友達や先輩後輩
輝かしい過去と傷だらけの今を比べたら 誰だってあの頃に帰りたいなって
思うことくらい許して欲しい
でもそんな空想は目覚ましに掻き消されて 今日もまた傷を作りに行く
爛れた癒着と村八分でずぶずぶの人間関係 狭苦しい会社の中で行われるそれは
どんな衝立を作っても梨の礫
でもさ そんな傷も時々たまには 絆創膏を貼ってくれる人や出来事があるもんで
生きてるのも悪くないなって思えるよ
繋がり作りの簡略化とともに減っていく会話と 求められるコミュ力の高さとの軋轢に
今日もまたひとつの若い命が散っていくのか
木に吊るされたランプのガラスが 対岸から投げられた石でパリンと割れるみたいに
その石を投げているのは大概が自分だってことに 気付かずに傷ついて命すら捧げたくなるけれども
衝立を壊されながらも生きてゆく
若者よ どうか死ぬことと見つけないでくれ
取っておけばまだ売れたランプを 一時の衝動に任せて壊してしまうような
誰かを恨みたくて責任を擦り付けたくて 布団の中で見たくない現実に見悶えるような
そんな時こそマッチを擦るんだ 自分というランプに石油を注ぐんだ
日を追うごとに揺らいでいく安寧の日々と 夢を持てと強いられる教育の軋轢に
今日もまたひとつの若い命が散っていくのは
もう見たくないから これ以上壊さないで
そのランプはまだ 部屋の片隅に追いやられても光るから
マッチも石油も意外と近くにあるってことを 急くがあまり忘れて命すら捧げたくなるけれども
時に使われる日を待ちながら生きてゆく
若者よ どうか死ぬことと見つけないでくれ
君を必要としている人は まだ 近くの村にいるはずだ
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