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あなたへ
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作詞 reddo |
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ご家族から 手渡された小さなノート
訪室するたびに いつも書いてたノート
いつしか 書けなくなって
一緒に棚に あなたと一緒に 眠ったノート
めくるたびに
いたるところに私の名前
毎日の思いに私の名前
手を握ると 不思議と あなたはゆっくり眠られましたよね
怖いよね
わかります
「眠るのが怖い」といっていた日も
「苦しい」「助けてくれ」「自分が自分じゃなくなる」
こわい
こわい
と
いっていた日にも 穏やかな字で 刻まれた私の名前
必死の思いで 刻んでくれた私の名前
私以外の看護師さんの名前も たくさんあった
あのとき看護学生だったから 時間だけはたくさんあったのに
なにも出来なかったことをいまでも悔やむばかりです
私が何かをしてくれた とか
今日も良い笑顔だとか
そんな些細なことも ことこまかく
ほかにも
色々書いてあったけど
それが何かは 読みとれなかった
読めないのは 目の前がにじんでいるからかと想ったけれど
手が 震えて 書けなかったんですね?
息が苦しくなってしまうから 喋らずに
必死に ノートに「み」とゆっくり書いてくれたこともありました
それだけ見たら 言いたいことは わかりました
水が 飲みたかったんですよね?
おいしそうに 飲んでいらっしゃいましたよね?
冷たい水が お好きなんですよね?
だから僭越ながら 冷やしてました 毎日
あなたがよろこんでくれるといいなって
みかんも お好きでしたよね
いつも冷蔵庫にありましたものね
あなたの娘さんと私と あなたで
一緒に
差し入れのお菓子を三等分してこっそり食べたりなんかして
いたずらっぽく笑うあなたが
私のほんとのおじいちゃんだったらいいのに
っていつも想ってました
「あんたは人の心を和ませる笑顔をもってる」
「人の心を明るくする才能をもってる」
「幸せになるんだよ」
「ぜったいだよ」
あなたのご家族から戴いたお手紙は いまでも大切な宝物です
あなたがくれた言葉もすべて
私は ちゃんと生きれているでしょうか
私よりも若い人の死を 目の当たりにもしました
あの人の歳は とうに追い越したし
ひたすら 生きてゆくばかりです
立派に生きるつもりはありません
私らしく生きていきます
変わったことするんじゃなくて
毎日のあたりまえのこと大事にします
それが一番 実は難しいんですよね?
身体を悪くしてはじめて
それに気づいた人をたくさん見ました
それに気づいた私もたくさんいました
あなたがくれた言葉ばかり
抱きしめてしまうけれど
これからも
自分で在ることに誇りをもって
無力な自分をあきらめることなく
精進していきたいと想います
これから出会う誰かの 一瞬でも
痛みや 苦しさを忘れられるような
何かを
その人らしくいられる
何かを
一緒に探したり見つけたり
気づいていけるような気持ちを
見つけていけたらと
想っています
それが私のゆずれないところ
私の満足でなくて
あなたの人生だから
あなたのように
生きていて欲しい
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