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蝶夢咄
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作詞 花楠 |
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蝶の夢を見た。
その蝶は私の喉をはい上がってきて 飛び出してきた。
透明な硝子で出来たような蝶だった。
とても綺麗な蝶だったのに
私はその蝶を捕まえて トイレに流してしまった。
蝶の夢を見た。
その蝶は森の中で一番醜い蝶
自分の影が怖くて 地上に降りる事が出来ない蝶
私はその蝶を捕まえて 噛み砕いてしまった
これは私の夢なのか それとも蝶が私の夢を見ているのか?
その蝶は私の枕元にいた
人間の手足を持った蝶
その蝶が 寝ている私の頭を撫でる
蝶が私の名前を呼ぶ
私は耳を塞ぐ
しかし蝶は私を撫でる
慈しむように
私はその蝶を捕まえて 触角をすべて抜いてしまった。
蝶の夢を見た
無数の雨粒よりも小さな蝶
ひらひら、パタパタ、蝶が踊る蝶が私の名前を呼ぶ
蝶の羽根の目玉模様がぐるぐる回る。
そして蝶は私を蛹の中に閉じこめ 蛹の外から私を撫でた
慈しむように どこまでも 優しく 優しく
その時ようやく私は気付いた。 蝶の正体が であることに
起きなければならない。 夢から 覚めなくてはならない
しかし起きる事は もう 出来ない
何故なら 私は
いずれ蛹が裂け アノミー化した自分が炸裂する、
そんな運命を 忘れて
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