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シルシ。
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作詞 深冬 |
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何度そうして身体に触れた?
まだ足りない、充たされないと、どれほどこうして、その肌に口づけた?
覚えちゃいないよ……
僕のものだと言い聞かせながら、いくつものキスの跡を残し、爪を立てて、
その声を聞きながら、赤い線を身体につけていく。
後でどんなにか君は途方に暮れるだろうと、自虐的に心の中でだけ微笑みながら。
どれだけ印をつければ、自分のものになるのだろう。
隣りの部屋の窓から差す光がまぶしい。
ああ、もう日が暮れる。
帰らないと。
今日もこうして終わりを告げて。
また明日も、きっと同じことを繰り返す。
先に玄関に立って靴をはいている、後ろ姿。
今にもドアの向こう側に消えてしまいそうで。
その背中ごと抱きしめて、肩にかかる髪に自分の顔を埋めて、そしてその耳にささやく。
「愛してる」
何度繰り返したところで、それは何の手形にもならないと、気付いてはいても。
印と同じで、他につなぎとめるものを知らないから。
「ね、分かってる?」
しばらくじっとされるままになっていた君は、ふいに抱きしめている僕の腕から離れた。
そして僕の方を振り返り、静かに微笑むと、その唇で僕の唇に軽く触れた。
「うん」
そう言い残して。
君はドアを開けると、踊り場にトンと立った。
僕は動けなかった。
やりきれない。
そう思ったところで、全て後のまつりで。
僕の唇に名残りだけ残して。
君は先に出ていってしまった。
どれだけ印をつければ、
自分のものになるのだろう・・・・・・
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