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「一本線。」
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作詞 Nastu Orihara. |
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目が覚めたら溺れていたので驚いて飛び起きた。
いや、溺れてる息苦しさで目が覚めて驚いた。
そんな訂正してる場合じゃない。
広いようで、とても狭く暗いその場所で
俺はひとり 孤独に死のうとしていた。
這い上がろうにも四方のうち、
何処が上下か分からないと俺は嘆く。
ぼやける視界は真っ暗で、
感覚的下方向から引きずられていく身体
こっちが下か。
重力と圧迫に押しつぶされて
次第に行動が鈍くなっていく身体。
左手に微かな感覚を感じ、
手のひらに神経を集中する。
探り当てたそれは、
俺にとっては無価値に等しく
今死の淵を彷徨う状況においても確実に不必要な物だと思われた。
けれど、俺はありったけの力で
そう、まるで勇者が剣で敵を切り裂くように
思いっきり左腕を横に振り切った。
閉鎖された闇に光を取り込むように、
俺は暗いその空間に
一本の 地平線を書いた。
何度も咽て それから
手の中に納まっている鉛筆を確認する
目の前には屋上のフェンス。
その向こうには地平線
あぁ、
俺の世界が
広がっている。
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