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指切り
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作詞 あんにゃ |
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実家より徒歩15分 そこに出逢いの場がある
俺が通ってた高校の通学路のバス停だ
現在(いま)ではすっかり町も栄えちまって
人波もごった返しているが当時は人もまばらだった
そこにあの日の君はいた
あのバス停で心奪われたんだ 目を細めるくらい眩しい光だった
『ズキン』と「これが一目惚れなんだ」と確信させるには
十分過ぎる凄まじい衝撃だった
このチャンスを逃したら 一生損するだろうと思い
俺は覚悟を決めて携帯の番号を彼女から訊いた
彼女は最初は驚いた顔をしたが意外にも快く応じてくれた
その後何度か電話やメールをやり取りし何とかデートまでこぎつけた
ファッションセンスゼロの俺がバイト先の先輩に
デート用のオシャレな服と原チャリを借りて
一足早い5月の海に繰り出すことに決めた
人がまだ少ないことを悪用してあわよくば
外で洞穴かどこかで童貞を捨ててやろうとも内心思っていた
しかし実際海に来てみると馬鹿でかくて
俺にはそんな勇気一欠けらもなくて
せめて少しでもいい所を見せようと
小学生の頃通ってたスイミングスクールの実力をいかんなく発揮して
格好のつかないバタフライで沖の方まで行った
いきなり足が全然地面に着かなくなってパニック状態に陥り
溺れてもがきまくった 本当に怖かった 気が付くと
彼女がそれはもう華麗なるフォームのクロールで
一瞬にして助けて抱き上げてくれた
そして何とそんな必要もないのに
人工呼吸の大サービスまでしてくれたのであった
あの海岸で口付けしたんだ 意識が遠のくくらい心地よかった
『トロン』と何かがとろけるようで全身に力が漲るような
不思議な感覚だった
聞いてみると彼女は3歳の頃から水泳を始めて中高と水泳部の名門校に通っていて
何度も全国大会に出場しているらしい 俺はとんだ恥晒しだ
今年の春 日本一を決める決勝で彼女はアンカーを任せられていたらしいのだが
彼女のミスでチームは負けてしまったらしい
その時のことがフラッシュバックしたのか彼女は顔をぐしゃぐしゃにして涙を流している 俺は思わずもらい泣きした
高3の彼女にとって今年の夏がラストチャンスだ
俺は帰宅部で受験勉強もしていないロクデナシだが心の底から彼女の健闘を祈り
「今年の夏こそ全国優勝できたらいいね」とびしょ濡れの髪と服のまま
何度も指切りを交わしたあの初夏の海。。。
あの浜辺で指切りしたんだ まるであきれるくらい何度も何度も
『ドクン』と心臓マッサージで息を吹き返すように
耳をふさげばいつでも蘇る
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