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丘の上の向日葵
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作詞 腑浦 類 |
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小さな丘の頂上で風に吹かれた向日葵
いくつもの花弁揺らして さらさらと音を立てた
照りつける太陽の下 なにからも邪魔されずただ上へと目指した
焼けたコンクリートの音がする そんな暑い日だった
たくさんの花を奪った車が丘を登ってきた 鈍く光る鋸乗せて
「ここからの眺めは最高さ」向日葵は誇らしげに言った
ほのかな香りを帯びたその声は機械の生温い風に掻き消された
小さな丘の頂上で風に吹かれた向日葵
その風の匂いはいつもと違い 驚いて項垂れた
煌めく太陽に反射して 光る刃が近づいてることにも気付いた
止めてくれとは言わなかった 新しい場所に期待した
この場所がこんなに素晴らしいんだ、他の場所もきっと・・きっと・・
小さな花屋の店先で風に吹かれた向日葵
いくつもの花弁は疲れきって 排気ガスの匂いに色を悪くした
店員はいろいろな栄養をくれたけれど そんなものはいらなかった
ただあの景色が見たかった 「あの眺めは最高だった」
日々、向日葵の花弁は剥がれていき 店員はゴミ袋を用意した
次の日には投げ入れられて 錆付いたトラックに運ばれていった
そのとき舞い上がった花弁一つ 都会の風に運ばれて
高い空へと飛んでいった そこで昔の風に出会った
「お久しぶり」と小さく揺れれば
「お帰り」と風は吹いて
ゆっくりと時は進んであの場所へとただ目指した
雲をくぐり降下していけば 「あぁ、この景色だ」と花弁は泣いた
ひらひら落ちていきついた場所は昔の古傷だった
満ち足りたため息一つつけば古傷の上で眼を閉じた
丘の上の向日葵の物語
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