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カラス 〜後編〜
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作詞 ●紫陽● |
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それから1年の月日が経った
12月のことだった
いつものように 唄を歌って
ベットにかえるところ
少年は 倒れた
電池が切れたみたいに
冷たい床に つっぷした
時間が止まった
頭が真っ白になった
そして 必死に助けを呼んだ
喉が震えて 上手に鳴けない
誰か!誰か気付いて下さい!
少年の呼ぶ声がして
ふと振り返った
すると 少年はかすれるような 声で
こう言った
「僕の両親へ これを渡して欲しい
夢を追って 突然 家を飛び出たから」
そう言って
僕に 手紙を渡すと
少年は少し笑い 少し泣いて それから
ゆっくりと 目を閉じた
少年は 滲んで ぼやけていった・・・
僕の頬をつたう
2度目の涙は 冷たかった。
雪の降る空の中
1羽のカラスが飛んでいた
止まらない冷たい涙が 横に流れいた
少年の笑顔が 頭に溢れていた
冷たくなった羽は とても重く
足の感覚もない
皮膚は切れて
血が滲んでいる
それでも痛みを忘れて
必死でただ必死で
7つ目の山を越えた
見つけた!あの家だ!
優しく灯った明かりが
あの暖炉にそっくりだった
彼は手紙をしっかりくわえ
扉をノックした
扉が開き 温かい匂いが
彼をつつんだ
彼は少年に良く似た
顔を見つけて 安堵と
眠気に ゆっくりと目を閉じた
あぁ スープが飲みたい・・・
彼は静かに 冷たくなった
手紙を読んだ少年の 父親は
少年と彼をあの家の
庭に埋めた 温かいスープをそえて・・・
もう 光の灯らない家から
もう 唄は聞こえることはなかった。
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