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詩人のトランク
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作詞 傍聴人その1 |
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街で見かけた詩人のトランク
貼\られたシールに見慣れぬ言葉
「渦の化石」「虹の絞り滓」「干からびた音符」
中身が何か知りたくて 奪えるスキをうかがった。
しばらくたつと 詩人はうたた寝
すぐさま奪って 遠くへ逃げる
「未知なる世界」「言葉の宝石」「精錬された感情」
期待に胸を弾ませて 静かにフタをあけてみた
だけどそこにあるのは深い闇だけ 見つかるものは何もない
気づくと詩人が傍らで微笑む
「それは何も生み出さない 死んでしまった詩の墓場だから」
「誰にも読まれなかった詩はひっそりと命を絶つ」
「君が今日から新しい持ち主だよ」
詩人はその言葉を残してトランクへ吸い込まれた。
代りに現れたのは取扱説明書 そこには
『新しい持ち主は重さを感じませんが、持ち主の詩が
死ぬたび、重さを増していきます。
一月間何も詩を書かない場合は何が起こっても保証できません
また、持ち主の意志で手放すことはできません』
とだけ書かれていた。
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