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夏の海で
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作詞 taonga |
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そうだな、ラテンの国のビーチがいい。
椰子の木の葉で作られた屋根のあるビーチのバー。
熱い風が吹き抜ける木枠だけの窓。暑くて半分溶けそうな脳と時おりわれた音を出す地元の音楽がとけあう。麻痺する感覚。
天井のゆるくまわるファンが熱をおびたまとわりつく風を運んでくれる。しお風のきつい真青と真白のビーチにあるバー。風に吹かれて本を読む。どこか現実離れした話がいい。耳の遠くで波の音が響く。目の端は青。
日の高くなる前から、くちびるはラムで色を増している。
読むことに疲れたら真剣に、ふざけて遊んでいるビリヤードをながめる。手には氷のとっくに溶けたぬるめのラムを持って。誘われるままにボールで遊びながらはだしは冷えた砂の感覚が心地いい。
落ちない太陽で時間はとまる。ただ、照りつける日射しと停滞する風だけが触れる感覚を残してくれる。
海がオレンジ色にそまる頃、脳は刺激を受けて活発さを増す。頬は紅く瞳は深みを。海沿いに屋台が立つ。潮の匂いとさかなを焼く強い匂いとココナッツとサトウキビのジュースの甘い香り。アルコールに雑じって夜の海のとばりが満ちてゆく。
一日が動き始める朝に鮮やかな昼に火花を映す空の藍色に沁みる少しの狂気をおびた夜に、音楽は響き音の破片がころがっている。やまない喧騒。忘れることのない音の調和。
寝場所は地元の宿がいい。天井のファンがベッドの蚊帳を微かに揺らす。耳に残る騒き。肌の消えない熱。続いていく外の夜。
ココナッツとサトウキビジュースの甘いだらしなさとこぼれるラムで充たして、溶ける太陽と揺れる風が焦がす地元の服を身につけて、終わることのない一日を惰せいにまかせてたゆたっていたい。
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