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No.77
作詞 歪み
 最後の声を聴いても 泣く事すら出来なかった僕は
 本当に心を持っていたのか
 この胸の奥底で燻っている焦げ付きは
 炎を上げることもなく ただ 息苦しくさせた
 涙は身体の内側に降った

 心地良い微睡の中で触れた肌の冷たさに
 いつか目覚める事を拒んだあなたが 今日こそはと
 僕の隣で横たわっているんじゃないかと
 跳ね起きる度に 寝息を探して耳を澄ます

 手の熱は心に奪われているのだと言うから
 あなたは心が暖かいと思われているけれど
 それを不快だと言うあなたは
 わざと 他人に無愛想で 蹴りつけているようだ
 尖っても 尖っても ふとした所で包むのに

 表面上の氷など ただ身を守る為に張った鎧で
 案外簡単に溶けてゆく

 分からないんだよ 分からない
 あなたが何の為に棘を張り巡らせるのか
 自らを傷付けてまで
 満たされないのに 何も埋まらなくて
 ただ 時計の長針と同じ速さで穴が開く
 それを埋めるのは僕じゃない
 他の誰でもなく あなただけが あなただけが

 その日は雨だった
 湿気の多い空気を吸い込む度
 質量も無いのに腹が膨らみ 身体が重くなる
 もしかしたら 心に奪われたのだろうか
 微睡の中で 何度もあなたが脳裏で生きる
 目を覚ました後で 冷えた布団の場所へ寝転がる
 
 
 

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公開日 2021/03/11
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