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C10H15N
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作詞 名無しP |
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彼女は自慢げに左腕を私に差し出した
茶色い縁取りの中にまだらな緑と紫の「打った」跡
眼の周りにはくまの様なやがり茶色の縁取り、と言うには不釣り合いな模様があった
もうアレが抜けて随分経っている筈だが彼女は妙に明るかった
医者に処方された薬が良く効いているようだった
隠れてアレをやる事はできない
場所が場所だけにこの国では運び屋は此処には存在しない
親権を奪われた彼女は
娘の話をする時だけ目を伏せる
よりによってアレに手を出して犯罪を犯した彼女には
子供と会う権利など無いと裁判官が判決を降したのだ
「どんな感じなの」と聞こうとしてやめた
喜んで入手ルートを教えてくるだろう
何が彼女をソレに惹き込ませた?
何が彼女を底まで追い詰めた
薬が効きすぎたのか、もう半分も彼女の言葉は私に届かない
呂律が回らなくなり、落ちる様に彼女は眠った
息をしている事を確認して 私も眠った
中途覚醒で目が覚めた
無意識に彼女に目線を送った
呪文のような言葉を囁いていた
感情の無い 規則的な単語の羅列
寝言じゃない
誰と喋っているの
其処に誰が居るの
それは貴方を救ってくれるのか
「人間やめますか」
っていう程壊れてはいない
彼女はヒトだ 間違いない
だけど生きている次元がヤッってない人のそれと
ズレてしまっただけなんだ
一度手を出したらもう戻っては来れない
その現実があまりに悲しくて何故か私が泣いた
どうせ行きずりの縁だ 深く関わる事もないだろう
それでも今でも覚えてるんだ
彼女の事を
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