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真夜中の部屋の中で
作詞 鳴浦二八
真夜中には 陽の下では聞こえない音が届いてくる
竹とんぼをぼくに作ってくれた
祖父が足を引きずる音
この部屋にかすかに聞こえるその音はまるで竹とんぼ
すり合わせた祈りの両手を
離せば遠くに行ってしまいそう

日に日に小さくなる背中を ぼくは支えられるかな
“それが人生だ”なんて 大人ぶることはもうできない

嫌だよ 怖いよ いなくならないで
握りしめたシーツが徐々に濡れてゆく
一粒、それがたたみに落ちた時
ふっと香った竹とんぼの匂い

近頃近所の工事が多くて 知った町並みが消えている
古いものが壊されてくたびに
新しいものが憎くなる
ぼくの部屋から見える景色も ずいぶん様変わりしたけど
自分はどうだと問いかける
そんな自分が怖くなる

ビー玉を薬代わりにして 熱を出した祖父に
あげたあの時の気持ちは ぼくにはもう抱けない

「ずっと元気で」空っぽの言葉を
かけるたびにあなたが笑うものだから
あげようとしたビー玉はとてもひやくて
ポケットから取り出せないままだった

日に日に曲がってく背中に 何度支えられたかな
家族という灯りはもう 長くないのは分かっている

でも
嫌だよ 怖いよ いなくならないで
握りしめたシーツが作るしわくちゃが
誰かの笑顔に見えたような気がして
ふっと見たら 窓が白みだしてた

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公開日 2015/04/18
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コメント 実際の別離の直前、書いた詩です。
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