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あ・り・が・と・う
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作詞 LUNA |
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ある昼休み、私は近くの公園でベンチに座って空を見上げた。
暖かい陽気に包まれながら、昔のことが頭をよぎった。
思春期の頃、よくお母さんと喧嘩をした。
喧嘩をする度、家から飛び出し走っていった。
悔しさと寂しさの入り混じった心を抱えながら、夜の公園へ走って行った。
一人ブランコに座りながら夜空の星を眺めてた。
まだ肌寒い中、私はコートも着ずに薄手のTシャツ一枚だけでブランコを漕いでみた。
肌身に沁みる寒さの中、少しだけ温かな空気を含んだ風が私を包み込む。
なぜだろう。星が霞んでぼやけて見えた。
ほほに伝わる一筋の線。私はいつの間にか泣いていた。
家に帰ると『おかえり』と笑ってお母さんが迎えてくれた。
本当は嬉しい筈なのに私は何も言わずに部屋に行った。
何をしても許してもらえると思っていた私。
お母さんなら許してくれると思っていた私。
でも、お母さんはいなくなった。
喧嘩した翌日なのに『いってらっしゃい』と笑顔で見送ってくれたお母さん。
でも、その日『おかえり』と言ってもらうことは出来なかった。
薄暗い病院の部屋の中で、冷たくなって目を瞑っている。
よく喋ってくれた口も、何時も笑顔だった顔も、温かく抱きしめてくれた腕も。
どれだけ『ただいま』と言ってみても、もう何も答えてはくれない。
この日、お母さんは消えてしまった。
私は独りになってしまった。
『あれから何年たったのだろう』
ふと目を開けると、暖かい風が通り過ぎた。
私も今では一児の母。
『お母さん、見ていてね。私頑張るから』
そう、心で呟き私は私の日常の中へと吸い込まれていく。
お母さんの懐かしく優しい気配に包まれながら。
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