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虚構の慰めに惑わされ
作詞 J'Soul (ジュゾウル)
テレビからの甲高い声が 体の周りで手を繋ぎ跳ねる姿に
一人の淋しさを忘れて笑い声を重ねた
部屋の隅から垂れ流しの歌声は
冷たい壁に反射して 混沌の渦を巻いていく
確かに大きな音量なのに やけに耳には遠く聞こえて
意識の欠片は渦に呑まれて 深い闇へと落ちていく
夢と現の狭間のまどろみで 霧がかかった頭が認めた
やけに鮮明な幻覚に手を伸ばす
指先が輪郭に触れた瞬間 それは幻と気付くのに
形ばかりの日々を重ねて
一日ごとに体は錆びてく 心は朽ちてく
全て緩やかに漂うままに
力のない波に呑まれて もがく気力すら溶けて流れた

暗い部屋に向かい一人 『ただいま』を呟く虚しさは身に染みていて
固い靴音と鍵音だけが冷たく響く
重い仮面を脱ぎ捨てて息を吐く
生温い外の空気が 体にまとわりついている
形を持たない他人(ひと)の名残を 想像の腕を振って散らす
疲れた頭は意味を結べず 歪んだ幻覚が笑う
善と悪との境目を探して そこで佇めば楽でいられる
目の前に現れた分厚い壁から
問いかけられた意味も考えはせず 目を逸らして耳を塞いで
すれ違う温もりを目で追い
後ろを振り返り また前にあるものを見逃す
何度繰り返す悪循環
最早傷の痛みにも慣れ 幸せを求める意味も忘れて

予定もないのに当たりもしない天気予報を睨む
週末の晴れた空に何となく誘われて 行き先も決めず街に出た
嬉しそうに腕を組む恋人達の影に重なり 昔の自分がこっちを睨む
思わず目を逸らしてうつむいた自分に ただゆっくりと頬を歪めた

行き交わす笑顔がまぶしくて
忘れていた痛みを 瞳の奥に思い出した
見えない涙を風がぬぐう
いつの間にか歩き出していた …まずは部屋の片づけでもしようか

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公開日 2010/10/03
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