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へちまの実
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| 作詞 望月椿 |
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「咳止めにいいから」と
君がいつか植えたへちまの種
縁側で飲んだラムネの味
かちゃかちゃいじった丸いビー玉
安もののビーチサンダル
金魚模様の風鈴
水浴び用の空色のホース
使い古して黒ずんだすのこ
扇風機に向かって
宇宙人と交信する君と
畳に寝そべって
ぱたぱたとうちわを扇ぐ僕
「こちらは地球です。
とても暑いです。
へちまがなっています。
そちらはどうですか？」
君は交信を中断して
冷凍庫からチューペットを取り出す
「宇宙人が応えてくれないわ」
汗がしゅるしゅる滝を作る
健康そうなふくらはぎを
だらしなく投げ出して
「明日も暑いのかな」と
僕の額の氷に触れる
「へちまが育っていいじゃない」
面白みの無い僕の返事に
「そうだね」と
楽しそうにうなづく君
へちまはぐんぐんと育って
僕らを置いていくけれど
僕は君の小麦色に焼けた手を
置いていきはしないから
明日も明後日も
夏は僕の庭を彩って
ぼてぼてとしたへちまの実に
ありったけの熱をそそぐだろう
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