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ある歌うたいへの献歌
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作詞 Fellow |
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お前が歌うその声は 小鳥のさえずりだろう
幾千羽の烏にまみれて お前はすぐに埋もれてしまうだろう
正直言うと俺はお前の ことを少し茶化していたよ
電車に揺られ頭を下げて そんな自分を諦めて生きていたよ
だけど退屈まぎれに 検索して見つけた
動画の中でギターをかき鳴らすお前
誰のためと言われれば 俺のためではないんだろう
でもなぜか でもなぜか 俺は嬉しくなっちまったよ
勝手に立ち止まるなとか
勝手に頑張れだとか
画面の向こうからじゃ届かないけれど
お前が嘆くかもしれない その数字の
ひとつになりたいと思ったんだ
遠くに行っちまったな
かっこよくなっちまったな
画面の向こうからじゃ会えないけれど
俺の飽き始めた この人生を
見直してみようかと思ったんだ
あの頃はお前のギターを へたくそだと笑っていたよ
押し入れから数年ぶりに出したら コードをほとんど忘れていたよ
正直に言うと俺はお前に 嫉妬していただけだったんだろう
東京に行くお前の列車 今更ながら見送ればよかったと嘆いているよ
だけど聞いておくれよ 飲み会のはずみで
あの頃の連れとバンドを組むことになったよ
今じゃそうさお前なんかとは 比べ物にはなんないけど
でもそうさ でもそうさ 俺はお前になりたかったんだ
勝手に立ち止まるなとか
勝手に頑張れだとか
とても言えるような身分じゃないけれど
お前を笑ったこの俺の指に できた肉刺(まめ)を
遠くで笑ってくれないかな
遠くに行っちまったな
かっこよくなっちまったな
今となっては俺の方が不格好だけれど
俺の飽き始めた この人生を
真剣に生きようと思ったんだ
お前がテレビに出ているのを見たよ すっかり綺麗になっちまったな
あのころと変わらぬお前の 真っ直ぐさを誇りに思ったよ
聞いておくれよ俺も今度 あの場所で公演が決まったよ
俺が初めてお前のライブ 行った地下のボロボロのライブハウスさ
勝手に立ち止まるなとか
勝手に頑張れだとか
無責任な声援もいいもんだよな
お前の真剣さも知らなかった 野暮な俺を
遠くで叱ってくれないかな
勝手にやめとけだとか
勝手に無茶だなんて
そんなもの言わせておけばいいのさ
お前の真剣さを少なくとも 俺は知ってる
遠くで応援させてくれないか
遠くに行っちまったな
かっこよくなっちまったな
画面の向こうからじゃ会えないけれど
俺のかき鳴らす ギターの音色が
聞こえたら笑っておくれ
俺の飽き始めた この人生に
光をくれたのはお前だった
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