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その町
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作詞 紋白蝶 |
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暗く閉じた部屋で笑っていた
独りでいることがこんなにも幸福だった
外を知りたくなかった
悲しみを知らなかった
電気もないその町には
やさしさというには陳腐なものが
有り余るほど溢れているのに
出会うことをしたくなかった
誰にも話したくなかった傷は
癒されることも無く
風化することもなく
君に出会うまで閉じたままだった
明るく開かれたこの世界で僕は
君を知り始めた
やさしさを知った
テレビも無いその町には
退屈というものは一つもなかった
やさしさと悲しみと
そしてすこしの思いやりで出来ていた
出会う事を知り始めた
誰にも話すことの無かった傷は
癒され始め
風化して
閉じたままだった鍵を開けよう
少しずつでいい歩き出そう
自分を見つめていたかった
弱さを知っていたかった
写真も無いその町には
人々の手で書かれた絵が溢れた
色とりどりで多彩なそれは
町中を幸せにする
ラジオも無いその町には
電波というものはなかった
誰かに届けたい言葉は
その人の瞳(め)の中にある
人を見て話し
人を感じて動き
人と隣り合って生きていた
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