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婆と白湯
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作詞 ●殻虚● |
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おやおや、誰か来やんした
おやおや、ずぶ濡れではないか
此方の火にあたりゃんせ
何も無い 辺鄙な処に如何用で?
そんな 悲しい顔されて
もっと 火に寄りゃあんせ
重たい着物じゃ 気持ちも重かろ
温い白湯でも 飲みやんせ
生憎 酒は切らしておるが
身体が温もりゃ 心も晴れる
云いたくないなら 無理には訊かぬか
何ぞ あり申したか?
はぁはぁ 死のうとなされたか
そりゃあ さぞ苦しかったろなぁ
人間死ぬ手前までが
えらく辛いと云いますからな
何ぞ 力になれぬかな?
そうやな それなら首括りなせ
ちぃと 其の后が汚いが
鴉が食うてくれますやろう
痛みも無いと聞きますぞ?
鴉の餌には成りたくないと?
はぁはぁ 悪魔の使いと昔より
云われておりますものなぁ
それなら 水に浸かりなせ
浮かぬように 石でも足に括りなせ
漬物石で良かったら どうぞ
自由勝手に 使やんせ
此れ又 其の后が汚いが
魚が食うてくれますやろう
まぁまぁ ゆっくり考えやんせ
何も日取りがある訳でなし
明日にでも 死にやんせ
今夜は 着替えてゆっくり眠りゃんせ
じゃないと風邪を引きますぞ
おやすみの最後に老婆心ながら
云うなれば
悲しみは幸せの鍵なんさ
幸せな奴ほど 幸せを知らんのよ
貴女は さぞ幸せになれるでしょうぞ
ははは 婆も色々とありましたぞ
それこそ 貴女さんくらいの 歳にゃあ・・・
おやおや 寝てしまわれた
今からが 良い処なのにのぉ
ははは 可愛い寝顔じゃな
明日は たんと、うめぇ飯を食わせてやるかな
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