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白に還るとき
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作詞 山琴 |
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冬の蝶のように儚く弱い君は
息が白くなる季節に笑って逝った
僕に「ありがとう」のコトバを遺して
空気の澄んだ冬の朝 君は窓の外を見ていた
その背中がやけに小さく見えて
抱きしめたくて手を伸ばした
でもなぜか届かないような気がした
君が消えて居なくなってしまう気がして
不安に駆り立てられたように名前を呼んだ
ふり返った君の顔がいつもと同じで安堵する
こうして毎日 同じ朝をくり返した
この街に初めて雪が降った日 君は居なくなった
僕はこうなる事に気付いていたのかもしれない
きっと もう君は死んでいるのだろう と悲しんでも
焦って君を探そうとはしなかった
僕は君が自分の亡骸を僕に見られたくないと思ったから
僕も君の亡骸をこの目で見るのは耐えられないから
僕はただ静かに涙を流していた
冬の蝶のように儚く弱い君は
息が白くなる季節に笑って逝った
僕に「ありがとう」のコトバを遺して
僕は初めて君と出逢った場所に来ていた
あの頃のように綺麗な桜は咲いてないのに
照れたように笑う君とまた逢えるような気がして
僕はただ雪の中を彷徨った
君の最期の記憶をなぞるように
そして僕は気付かなかった 僕のうしろに君がいること
声をかけずについて来る君は何を想ったのだろう
歩き疲れた僕はそばにあった木にもたれてしゃがみ込んだ
そうして初めて気付く もう一つの足跡
数歩うしろで途切れた足跡
よく見れば木の陰に人が倒れこんでいて
僕は まさか なんて思って壊れたように笑いながら泣いた
足跡の正体は口もとに笑みを浮かべた君だった
そして 君は僕に「ありがとう」と囁いて 逝った
僕の歪んだ笑みは消え 冷たい涙だけが頬を伝って雪を溶かした
冬の蝶のように儚く弱い君は
息が白くなる季節に笑って逝った
僕に「ありがとう」のコトバを遺して
僕をひとりこの世に残して…
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