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玄関に花束を
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作詞 きなこ餅 |
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窓を開けた
金木犀の匂いが鼻をくすぐる
僕らのいた部屋を塗り替えて
折角全て片付けたのに
夕暮れのオレンジが零された
やれやれと掬った掌に映る顔
僕は泣いていたみたいだ
悲しみは右足に縋り付いていて
窘めることは思い出すに等しいから
ただ黙って引きずりながら歩いた
臆病者だと君は指をさすかな
ドアを開けた
風の冷たい歌声が僕を迎えて
同時にこの部屋は見送って
ぱたりと閉じたこれまでのこと
呆気なさはオレンジに似ているな
落ちてゆく言葉を君に伝えていたらって
ずっと眺めていたくせに
八階に広がった景色のどこにも
君の面影は残ってなんかいないんだ
夕焼け空を電線で束ねたなら
二度とは開かないドアにそっと手向けて
悲しみは右足に縋り付いていて
窘めることは思い出すに等しいから
ただ黙って蹴飛ばしながら歩いた
いつか転がったそれが君に届くといい
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