|
|
|
時間の流れと色あせた記憶
|
作詞 雨弓 |
|
夜の散歩 心地よい風が吹く中
懐かしい場所を歩いていた
小学生の頃に見つけた、彼女の家への近道
前は背を伸ばしても見ることが出来なかった外の景色が
鮮明に瞳に映されて時間の大きさを知った
″あ、そこいつもぬかるんでるから気をつけてね。″
不意に彼女の声を思い出したとき、見事にすべってしりもちをついた
時間は過ぎても、僕の中身はちっとも変わってないらしい
ふ…と知らずのうちに笑みをこぼしていた僕は、あわてて口をヘの字に曲げた
過去にするつもりはなかったのに
時間はとても残酷で、冷たい
どんなに僕が立ち止まっても
時間は止まってはくれなかった
そりゃあそうか、僕だけの世界じゃない
足を進めれば、あの頃となんら変わらない風景
並んだ借家に土の匂い
アリの行列を避けながら慎重に歩く
変わったのは、すぐ近くに大きなスーパーができた位だ
ふとつま先の前を見ると彼女の家
慣れたようでいまだ慣れない道を慎重に歩いてきた
誰も住んではいない借家、そのはずなのに
用はないはずなのになぜか僕はここへ来た
きっと僕は確かめたかったのだろう
色あせすぎて形を失ったこの風景を
彼女の存在を
僕の存在を
ちゃんとあったんだよ、夢じゃなかったんだよって
また一つ鮮明に刻まれた記憶
月に照らされ輝いた古びた家
時間の歯車に狂わされたときはもう一度僕はここに立つだろう
彼女が帰り、笑顔でたたずむ姿を夢見ながら
|
|
|