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風と僕と
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作詞 雨弓 |
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絶望―――
そう、僕は絶望していた
この世界に 親に 先生に 友人に
そして、不甲斐ない自分自身に。
それは突然訪れた
考え事をしていたせいなのかもしれない
塾帰りの月のきれいな夜、トラックと衝突した
なのに僕は今、大好きな草原にひとりポツンと立っている
全身に、痛みはない
むしろ、これ以上ないってくらいに元気だ
とりあえずここに居てもしょうがない
そう一歩踏み出した途端、見事にコケた
おかしい
ここ五年ほど転んだことのない僕が転ぶなんて
もう一度踏み出してみる
しかし結果は同じだった
どれだけ繰り返しただろうか
ついに僕は息切れをして、その場にへなへなと座り込んだ
頬を汗が走る
足が鉛のように重い
″僕は死んで、地獄にきたのか…?″
僕をそう思わせるに、それは十分だった
どれだけ挑戦しても変わらない結果は、地獄以外のなにものでもない
踏み出すことを諦めたとき、背中をドンと風に押された
条件反射で、一歩前に踏み出す
なのに関わらず、僕は転ばなかった
そして気付いた
僕はいろいろなものに支えられてきたことを
心に生じた諦めをぶち壊した風は、僕自らの力ではなかった
そして同時に、僕が絶望した彼らが僕を支えていたということに
拳をきつく握り、一歩踏み出す
急に世界が反転し、一瞬病院独特の、あのツンとした感じが鼻に広がる
その瞬間に吹いた風とともに、空耳ではないだろう声が届いた
”頑張れ!!!あともう少し!!!”
”しっかりして!!!大丈夫よ!!”
それは間違いなく、僕が絶望した、彼らの声だった。
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