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疑問
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作詞 dnalocin |
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朝、目が覚めた時、私は今の世界にはいない。
どこか遠くの、それでいて近い、他の世界に立っている。
そこでは、決して会えない人に会えた。
そこでは、決して出来ない事が出来た。
すべては夢のようだった。
夜、意識が消える瞬間、私は他の世界へ旅立っているのだろう。
もしかして、ここは嘘の世界で、毎晩足を運ぶあちらの世界が本当なのかも知れない。
どちらでも良かった。下らない。ナンセンスである。
私は私でしかないのに。
俺は俺でしかないのに。
私の体には違ういくつかの私がいた。
いつからかはわからない。気付いたら、俺と僕と私がいた。
私は普通の女の子。
俺は普通の男の子。
僕は不思議な異次元の住人。
この頃、目を開けることが億劫になってきた。
光を脳から隔離する時が一番楽なのだ。
それは物理的な問題に限らず、他人から発せられる光を視界から遮断する場合も楽だった。
楽は善で、面倒は悪である。
他人から発せられる光のようなあれは、私にとって面倒極まりなく、そして刺激的だった。
私は人間の手が、たまらなく大好きだ。
体毛の薄い皮膚が複雑な波を形成し、柔らかく肉と骨を包み込む。
所々にあるしわと、滑らかな皮膚のギャップが、たまらなく、いい。
すべての人間はそれぞれ違う柔らかい手を持っている。
爪は嫌いだ。なぜなら、とがっているからだ。
冗談の通じない人は、嫌いだ。
楽しくないのだ。
かといっていつもふざけている人も、嫌いだ。
秩序を守っていないからだ。
私といえば、冗談も通じないし、いつもふざけているのである。
俺は、誰だ。
私は、誰だ。
僕は、誰だ。
誰なんだ。
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