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天然石
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作詞 妖花 |
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地平線から橙の光が漏れるあの夏の日
僕は君を見つけた
波を優しくすくい遊ぶ君は
まるで透き通る桃色の天然石のようだ
僕はこの街が好きだ
学校の屋上から見える裏山も
路地裏に潜む猫の親子も
その先にある海の夕日も
どれも透き通って
あの夏祭りの日は黄色と桃色のひまわりの着物を着ていた
金魚すくいは猫のように金魚を見ていたね
射的なんかはずっとイルカの緑と桃色の人形を取ろうとして
急にりんご飴を食べにいったり綿あめを買いに行ったり
手をつなごうと不意に言ってみたり
でもそんな君に少しずつ惹かれている僕がいる
この夏は僕にとっての一回の夏だ
君はくすりと笑いながらこんな僕の手を引いて
提灯の光の中に連れ込む
そんな君はまるでペンギンみたいに周りの目を引いて
僕だけを見つめてほしいのに
そんな気持ちに気づかない鈍感な君は
天然石のように透き通っている
二人で着物のまま路地裏を抜けていく
誰も他にはいない猫と僕と君だけの砂浜
君は水を僕にかけては楽しそうに笑う
そうして僕もつられて笑う
君のペンダントが月の光に反射して光っている
この夏は僕にとっての一回の夏だ
君の瞳には何色もの水上花火が写って
ありきたりな「きれいだ」という言葉は言えずに
僕と君は猫を抱いて花火を見る
このままずっと花火が見れたらいいのに
でもそんなことは叶わなくて
僕は君を見つめていた
花火が終わると君は鈴を転がすように笑い
僕はそんな君に桃色の天然石が入ったペンダントを渡した
君は笑ってこんな僕にマカロンとハナニラとミヤコワスレを渡す
君はお礼を言い裏路地から跳ねるように出ていく
それを見ると何故か悲しくなってくる僕がいる
君は夏祭りの後世界中から消えてしまった
もう会えないのはわかっている
君からもらった宝物の花を抱えて僕は一粒
なみだを流した
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