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No.78
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作詞 歪み |
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あれから何年経ちましたか
時計の針が進む音を聞きながら
いつの間にか数える事を止めてしまった
印のつかないカレンダーを捲りました
毎秒繰り返される奇跡の連続に慣れていました
安売りされた輝きは 叩き売りの感動映画よりも暗くて
足元の影に混ざってしまいました
それを踏みつけて歩いている僕たちに
この星は定期的に罰を与えに唸ります
あちこちで 忘れないように 大きく鳴いている
あなたは星に連れて行かれてしまいました
あなたを思う全ての人への罰でした
僕はあれから何かが変わっていくのに
あなたは何も変わらずに
それどころか 少しずつ 消えてゆくので
僕はあの時一緒にいられたなら良かったと
その手を離さずに縛ってしまえば良かったと
これまで考えていなかったくせに
こんな時にばかり悲しみに溺れているのです
喧嘩した時にだって 怪我をした時にだって
それが出来たはずなのに
あれから僕は背が伸びて あなたよりも目線が高くなりました
日常の中で 世界は 景色は 毎秒変化をしています
僕はその波に飲まれても 生きていることが悲しかった
変われ 変われとせっつかれて
生き急いでいる中で 少しだけ咲いた桜を見つけました
どうしてこんなに急いでいるのだろうかと
僕は僕に問いかけながら その木の下で空を見上げた
変わらなければならないところと
変えてはならないところとが あると思うのです
あれも これも それも 急いで急いで
時計に気を取られて走るウサギの背中を見送って
僕は足元に視線を落として それから顔を空へ向けた
神様はこの儚く短い生涯を大切にしてほしいと言う
仏様はこの儚く短い生涯の中でも精進してほしいと言う
僕はその半分ずつがいいな
あなたと過ごした全てを忘れてしまう前に
僕は 僕は
あれから十年が経ちました
長いようで 短いようで やっぱり過ぎてしまう時の刹那
ひとつだけ残ったあなたの声を聞きました
最後の二秒は 笑い声でした
毎日生まれている 奇跡の子種を
僕は掬い上げて発芽させたりは出来ないけれど
たったひとつの緑のために
一体なにが出来るのかは 考えられるかな
いつかまた この星は僕たちに罰を与えに酸素を吸い込むでしょう
産声を上げるその前に 一体何が出来ますか
絶望が笑ったその瞬間に 希望が涙を拭って前を向く
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