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配達員の内情
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| 作詞 橙 ヨシヒコ |
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それほど大きくない家なのに
このピンポンが聞こえないですか
走らなくてもいいから
なるべく早くに来てください
時間帯指定をしたのなら
その間は家にいてください
できることなら ごめんなさい
お風呂にも入らないで
プチパニックになりながらも
平静を装っているんです
わからないかもしれないけれど
１分１秒が惜しいんです
世間話もそこそこに
ハンコかサインをください
向きとかフォントはどうでもいいです
拇印なんて もってのほかです
ちょっと待って､それはもしかして
シャーペンではないんですか
ボールペンなら持っているから
奥に探しに行かないで
声をかけたら ご主人の声
奥さんを呼んでいる
奥さん限定じゃありません
とりあえず あなたが来てください
玄関前に狂暴そうな犬を
つないでおくのはやめてください
鎖が切れたら 殉職しそう
親の仇みたいに吠えている
子供さんを伝令によこさないで
ひと項目ごとに行ったり来たり
冷や汗まじりの汗が流れる
最後の一軒なら まだしも
やたら雑なサインも嫌だけど
やたら丁寧なのも困りもの
永字八法を究めすぎです
一画ずつ 僕は待っています
外人さんの試し書きのような
サインに首をかしげる
でも多分､言葉も通じないから
いいということにしておこう
優先順位もわからないほど
やたら荷物の多い時でも
事故を起こせば なんにもならない
急いでいる時ほど 心にゆとりを
世間話は嫌いじゃない
余裕が ただ､ないだけなんです
そんなことを言いながらも
ついつい話に乗ってしまう
ねぎらいの言葉をかけられると
がんばっている気持ちになるんです
いつも ありがとうございます
また荷物があるまで ごきげんよう
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