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最期の水
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作詞 iris |
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暗く光る空が 旧いさかなの涙を落とし
何気なく包み込んだ あなたの身体が冷たくて
こころがあたたかいからって あなたが言ったから
まだまだずっとわたしは おこがましく渇望している
下弦の月も笑わなくなった
泥だらけな掌と白くて柔らかな頬が触れ合って
「ごめん」って 「遅くなって」って
もう自分の声も聞こえない
喉の渇いたわたしは
浅ましくあなたの身体を掻き抱いて
目の見えないあなたは笑い
まだわたしの髪をぐしゃぐしゃにした
大きな背中は細く丸まって
肩越しの吐息はゆるく冷たい
わかっている、知っている、
もうわたしの声も聞こえない
抱きしめた身体は小さくて
首筋に伝う雫は炎を帯びた
わかっている、わかってる
もうあなたの世界はここじゃない
「大好きよ」って 「会いたかった」って
言いたいことはたくさんあって
聞きたいことはもっとあって
もっともっと そばにいたくて
撫でられた頭のぬくもりが
いつの間にか消えてしまって
力の失せた空蝉のような心のどこかで転げ落ちる
まだまだずっとあったかいからって
昔にあなたが笑ったから
渇望する雨は 水に浮いたさかなのなみだ
わたしの涙はあなたの涙で
あなたの涙はわたしの涙だった あの頃に
ただ漠然と祈った 透明な明日を渇望した
わたしは透明な水の中で揺れるように祈る
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