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雨ざらしの舟
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作詞 新田拙 |
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舟は誰も乗せていない背に
静かに櫂を泳がせて
薄暗い昼間の空を
もやをまとい進む
雨ざらしの舟が
軋んだ音を立てて
ゆっくりとゆっくりと
空を流れる
僕はそれを見ていた
街の中から
ひっそりと黙って
空を流れる
舟は幸せと不幸を背負い
平衡を保ち進んでいく
見下ろせない街を抜けて
闇を逃れ進む
雨ざらしの舟が
軋んだ音を立てて
ゆっくりとゆっくりと
空を流れる
僕の記憶の
片隅に隠れ
抜け出せない人の
幻影を乗せて
舟は静かに街へ降り立ち
どこかに乗客を待つ
薄暗い昼間の空に
誰か連れて旅立つ
雨ざらしの舟が
軋んだ音を立てて
ゆっくりとゆっくりと
空を流れる
篠突く雨に
姿隠して
誰かの泣く声も
やさしく塞いで
空を流れる
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