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犬守 いぬかみ
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作詞 もと |
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しゃぶり齧ったリンゴは十の昔に土へ還った。
ここでお前は何がしたい?
檸檬も杏子も柘榴さえ、お前の欲は満たせない。
腹が減ったのか、話相手が欲しいのか?
暇に見えるか。そうだろう。
肉の骨なんて上等なもの持ち合わせていないから
この僕の指でも咥えて帰ればいい。
そういって男は僕に手を差し出した。
ずっと誰かの下僕だった僕に、差し出された手は骨ばって細くて、守りたくなった。
その日から、僕はその男を主人に仕え、もう10数年
ここで眠ったようになってから、男は全く目覚めない。
退屈しちゃってしょうがないよ。
指はちゃんと残っているさ。
でも、もう起きないから
あと3日起きなかったら、食べてやるんだ。
僕はずっと、あの手の指が食べたかった。
ずっと我慢したんだ。待ては得意なのさ。
ねぇ、もう食べていいでしょ。ねぇ。
男の手は力なく項垂れて、犬に差し出すように・・。
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