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katharsis−カタルシス−
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作詞 悲喜仔 |
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―ソレハ、穢レタ世界ニ落チテイッタ、一筋ノ光―
一匹の若き堕天使が、欠望と無気力な眼差しで、
廃墟と化したビルの上から、彼の棲む世界を見ていた
其処は、荒廃した地上 堕天使達の巣食う街
異臭を放つスラム 飛び交う罵声と 黒い羽
騒々しい、セピア色に薄汚れた世界
彼は死にたかった
この倦怠感から開放されたくて
しかし堕天使は死ぬ事が出来ない
果てる事の無い欲望の膿から生まれたのだから
彼は呪っていた 堕天使の宿命を
・・・その時。
少し離れた雑居ビルの 路地裏で何かが光った
疑りながら、彼は光の在り処を探った
塵屑に埋もれたものを、拾い上げてみた
―卵?
それは心(ハート)の形をして 透き通っていた
鼓動のように光るその中身は
―天使!
天からこぼれ落ちてしまったのか 彼は曇天を仰いだ
光を差さない暗雲の向こうに 天界が拡がっているという
―俺でも届くのだろうか?
彼は卵を抱えて飛び立った 周りの堕天使が襲い掛かる
―止せ、止せ。お前らしくもない。
そいつをよこせ。喰ってやろう。
―どうせ滅びたいのさ、最期にらしくない事でも
してやるよ。こいつは向こうに還してやる。
こいつは生きている。
街がどんどん小さくなる 視界が雲に阻まれる
我武者羅に高く飛ぶ ひたすら上を目指して飛ぶ
明かりが増して 眩しさに目が眩む
それでも彼は高く飛ぶ 最期に大嫌いな「善い事」を
試みるのだ
聖なる光が 堕天使の身体を蝕んで行く
熔ける前に 消える前に
―届け。
最後の力を振り絞って
光の渦に向かって、卵を投げる
卵に罅が入って
白い翼を持った、少女が生まれた
―良かった。
痛みに悶えながら、堕天使は再び堕ちていく
その黒い羽は、抜け落ちていった
・・・しかし光は、彼を包み、落とさなかった
―マッテ。
生まれたての天使は、彼にしがみついた
すると彼の皮膚が殻のように 罅割れ、剥がれていった
そしてその中から、白い身体が現れた・・・
・・・これが、katharsis― 浄化の物語。
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