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オオカミ青年
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作詞 鳴浦二八 |
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立ち枯れた木の幹の下 ざわめく夜風の真ん中
遠くの街の灯を見下ろして 少年だった頃を思い出す
嘘つき呼ばわりをされて 誰も信じてくれなくて
一人っぼっちという痛さと 重さをあの時知った
大人は僕を叱り 子供は僕をからかって
泣きじゃくって引きつった声のままで何度も謝ったけど
嘘が嘘として在った 町はもうどこにもない
都合のいい嘘だけが 我がもの顔でのさばっている
僕があの時のように 嘘を精一杯叫んでも
叱ってくれる人はもういない からかう奴もいない
蠢く草原(くさはら)に囲まれて 一人で嘘を叫んだ
もしも雨でも降ったなら せめてもの慰めになったけど
空には星が瞬き 雲はまばらに流れて
ぽっかりと浮かんだ満月が 嘲笑うように光る
ほらお月さまよ 哂う相手は僕だけじゃないだろ
宴に祭りと騒いでは自分をごまかして生きる人の群れ
嘘を嘘とも思わない 街に別れを告げよう
信じたいものだけを 本当にしたいだけなんだろう?
あの日僕を怒鳴ったくせに 僕を無視したくせに
こだまする遠吠えは狼か いや僕の泣き声だ
あぁどうかお月さまよ いっそ狼に変えてくれ
誰も食べたりはしないから どこか遠くまで行ける脚が欲しい
嘘が嘘として在った 町はもうどこにもない
信じたいものだけが 真実の顔でのさばっている
清く澄み渡る月夜に 染み入る遠吠えが一つ
泣いているかのようなその声に 足を止める者はいない
去りゆく狼が一人――去りゆく狼が一匹――
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