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友に告ぐ
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作詞 悠馬 |
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「俺は何だって分かる」
彼がそう言った。
「自分のこと以外なら」
とも言った。
自分のこと以外なら、
この世のこと全て―
生も、
死も、
愛も、
天も、
地も。
全てが分かると言った。
僕には分からない。
ハンカチの中の黒い汚れ。
相手が笑っているのか、笑っていないのか。
あの樽の中には何が入っているのか。
彼はどこにいるのか。
全部、分からない。
あそこにいる彼女が誰で、
あの映画はどんなので、
あのケーキはどれくらいして、
あの靴を作るのにどれくらい時間がかかって、
その店がどこにあるのか。
さっぱり分からない。
そんな僕を、彼はバカだと笑う。
でも、バカなのは君の方だろう?
「死」を体験したことのない人間が語る死は
ただの妄想であって、
本当の「死」ではないのである。
僕が分かることは、
たったそれくらいさ。
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