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「嘘」になった日
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作詞 条峙 |
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いつの間にか越えた身長はもうはっきりと俺の方が高くなって
繋いだ手も息を飲んでしまうほど小さくなってしまったんだ
嫌だ嫌だと子供のようにだだをこねる母親を前に
俺は黙り込むしかできなくて
記憶に残っている父さんが宥め説き伏せるようにして
俺は一緒の散歩を許された
要領の得ない居心地の悪い会話を何度も繰り返しながら
思い出のたくさん詰まった場所へと細い体と共に足を運ぶ
最初は昨日食べた物が思い出せないくらいだったのに
俺はいつしか記憶から消えて
この町で一番の病院で見てもらったときにはもう
手遅れだと言われて唇を噛み切った
幾つもの思い出が生み出された公園に辿り着くと
母さんは誰も居ない砂場を指差して俺の名前を呼び続けた
敵意を剥き出しにして手を離せと言うその顔の
その瞳は確かに俺の顔を見ていた
嘘みたいに晴れた空 嘘みたいに空気が澄み切った日に
母さんの中で俺の存在は「嘘」になったんだ
いつか忘れてしまうのかな こんな風に散歩をしたことも
母さんが産んだ俺という人が居たことさえも
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