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老舵手とカシス
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作詞 紗散 画宮 |
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今に始まったことでは無いが
1人目覚め 冷めたシチュー 灰色の朝
虚しさの右側にはいつも
本 並んだ埃かぶる棚の上
嗚呼……
淡い紫の空の彼方には
ひつじ雲の群れの中に沈む暁
遠く広がる都心を鏡に
水面は静か 顔を合せ
嗚呼 ああ、感情の逆流
嗚呼 ああ、走馬灯のように夜は明けゆく
すでに
川でないが 川と言った 川を渡る 渇く喉を
潤した 川でない 川の水の
香る街の 片隅に 確固として そこに立つ
カシスの木の 輝きは 空(から)の中に
淡い紫の溶けた空の下
小さい船に乗る若い男と女
行き先を訪ねはするが
時の中に沈むそれを知りもしない
嗚呼、ああ 拙速の今日を
嗚呼、ああ 飾る黄昏も色褪せて
また
反射した 川でないが 川と言った 川の畔
今日もまた 先立った 妻を想い
嗚呼、
悲しみも 霞み出した 悠久の 川の流れ
乾かした この身 未だ 川の上で
虚だね 空虚だね 伽藍だね しかし いつか
カシスの木の あった場所の 下に眠る キミの側へ
嗚呼、ああ
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