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a nameless cat
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作詞 明杏 |
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生まれてすぐ親はいなくなった
それゆえ名前も聞いていない
いつしか俺の名前自体が
“ナナシ”に変わっていた
生まれてから親に教わった
この世で生き残るための知恵
いつしか俺は独りぼっちで
生きることに慣れていた
その余裕がもたらしたのか?
突然 食料が獲れなくなった
困り果て死にかける俺に
突然 女神が舞い降りた
白く美しい毛並みの彼女は
赤い首輪に付けた鈴を鳴らし
くわえた魚を俺の前に置いた
“食べていいよ”と微笑む彼女が
俺の空っぽを一瞬で埋めた
初めて知った 自分が笑えること
“マリー”と名乗った白い彼女と
俺は毎日 会うようになった
どうやら彼女は俺と違って
人間と居るみたいだ
俺の名前は“ナナシ”なんだと
話しても彼女は微笑んでた
どうやら俺も彼女と会うのが
日課になったようだ
しかし突然崩れた
彼女の姿を見かけなくなった
それに伴い衰弱する
この体にムチを打って
彼女に合う為にひたすら走った
高く角張った塀を乗り越えて
彼女を見つけた瞬間 叫んでた
「近づくな汚い野良猫め!」
罵られ蹴られながらも俺は
彼女にただ一言を叫んだ
傷だらけのナナシは道を駆け抜けていく
猫は最期を独りで迎える生き物なのさ
いつもの様に独りになった俺は
音も立てず その場に倒れ込んだ
最期に彼女に会えて良かった
初めて口にした“ありがとう”は
ちゃんと彼女に届いただろうか?
ナナシは微笑みながら目を閉じた
息を引き取った灰色の猫の
涙を舐める白い猫がいた
ナナシに会えて良かった
そう呟きながら泣くマリーは
赤い首輪に付けた鈴を鳴らし
彼に“おやすみ”と歌い続けた
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