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「じゃあ見なきゃいいじゃん」
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作詞 Schrödingerの猫 |
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世の中にあふれるきれいごと。きれいごと。きれいごと。
愛だの恋だの夢だの。
理想ばかり並べてるだけの詩や好きとか嫌いだとか、出会いとか別れとか、寂しいとか一緒に居たいとか、そんなことしか書けないようなクソな詩人ばかりの世相。
「じゃあ見なきゃいいじゃん」
と、お前は言ったんだ。
言いたいことは沢山あった。
批判して何が悪いのか分からなかった。
書いた本人が気分悪くするから?だったら書くなよ。批判も覚悟の上での詩だろ。
自分だけ気持ちよければいいオナニーとは違うんだよ。
ふいにつけたテレビから流れていたのは自殺のニュースだった。
「え〜18日午前7時15分ごろ、高知県香南市の市立中学2年の男子生徒が自宅の自分の部屋で死亡しているのを母親が見つけ、香南署に通報しました。同署は自殺とみて動機などを調べている模様です。尚、生徒が通っていた中学校の校長によると、いじめなどは把握していないとのことです」
こういうニュースは何のために。誰のために。
「生きたくても生きられない人は沢山いる」
こんな常套句は、この中学生にも該当するのか?
でも実際僕には関係ないし、他人が死のうと僕の人生に何ら影響は及ばない。違うか?そうだろ?
結局自分に関係ない人なんてどうなったっていいんだろ?
なのになんで人のために生きろって言えるんだよ。
嫌なことは見なかったことにするのかよ。
便宜的な生活や詩で何を伝えようっていうんだよ。
自己欺瞞な詩ならそう言えよ。
雨より風より雪より人の視線の方が冷たいってことくらいみんな知ってるんだろう?
経済的余裕がある奴以外募金なんてしないことくらいみんな知ってるんだろう?
人は優先席を譲らないことくらいみんな知ってるんだろう?
人が人を見た目で判断することくらいみんな知ってるんだろう?
人が倒れていても、いじめられていても、見てみぬフリをするをすることくらい知ってるんだろう?
俺は違う私は違う!!
うるせぇよ全てがそうじゃなくても圧倒的にそういう奴が多いことくらい、言わなくても分かるだろう!?
誰だってまず自分が優先なんだ。
中学の授業の時、ユニセフのビデオを見せられた。
映っていたのは、同い年か或いは小学生くらいの少年。背中にはランドセルではなくライフルを背負っていた。
覚醒剤を服用し、フラフラになりながらも銃を撃っている。脚から血を流している少年。とても苦しそうに顔を歪めていた。
でも心は痛まなかった。それよりも何度も時計を確認するほど授業がだるかった。
実際少年の気持ちなんて分からないよ。分かりたくても。生まれた環境も育った環境も違うから。
分かったフリをする奴はいるけど、それは勘違いだ。だってそいつは実際に戦争をしていないんだもの。
銃を撃ったことも、人を殺したこともないんだもの。
それに、生まれた時から戦争という環境なら彼らにとってはそれが普通で、日本で暮らしてる人々が今から戦争がある環境になるのとは心境が違うよ。
先生言ってたよね。「人は人、自分は自分」って。
そんな風に同語反復していたけど、この授業で僕は人の矛盾や世の中は便宜的であることを覚えたよ。
持ってるものさしが違うんだから、比べることが出来ないことくらい分かっているはずだよ。
「ていうかさぁ、宇宙から見たら戦争もどうでもいい話だよね」
宇宙から見たらどうでもいい話なんて地球で話したところで何も解決にはならないよクソブスが黙れよ。
そういえば先生、あの時「君達は恵まれているんです」と言ったけれど、あれってどういう意味だったんですか?
恵まれているから恵まれていない人を助けろって?
君達は恵まれているからたっぷり優越感に浸りなさいって?
僕は真意が知りたい。
先生、感情が実利に勝てることはあるのでしょうか。科学が進歩してそのような効果が得られる薬は開発されないでしょうか。でなければ僕は他人を助けることは出来ないかもしれません。
先生もそうですよね?困ってる人を見かけてもまず見た目を確認してから判断しますよね?
小汚いおっさんとめっちゃ可愛い女の子が倒れていた場合、助けてもらえる比率は!?
ていうか新宿中央公園に行けばそこらじゅうにルンペンが居ますよ!
先生も知ってますよね?どうして助けないんですか?
自分のせいでルンペンになったから助けないんですか?
果たして一概にそう言いきれるんでしょうか?中にはどうしようもなく、仕方なくルンペンになってしまった人だっているかもしれないですよ!!
炊き出しだけじゃ救えないですよ!!
あ、ていうか先生のそのブレスレットいくらですか?それって生きるために絶対必要ですか?必要じゃなかったらそれ売ってルンペンにお金あげましょうよ!!
その日、僕は夢を見たんだ。
「すいません、歌手セット挫折付き1つ下さい!」
「かしこまりました。こちらのセットは大変リスクを伴いますので用法用量をお守りください。尚、不必要となった場合は挫折の際に燃えるゴミとして処理してください」
「分かりました!」
「それでは良い人生を」
「すいません、僕も歌手セット挫折付き1つ下さい!」
「申し訳ありませんが、お客様はそのセットを注文することは出来ません。お客様が生まれ落ちる国はソマリアですので、承れるのは兵士セット戦争付きなどになります」
「そうですか…」
「ご安心ください。生まれ落ちる際には現在までの記憶等は全て消去されます。ですから、現在戦争に対する恐怖や不安は一度無くなります。生まれた時から既に戦争という環境であれば、そこまで辛いものではありませんよ」
「分かりました。じゃあそのセットをお願いします」
「かしこまりました。こちらのセットはどのようにお使い頂いても構いません。しかしお客様が死ぬまで処理することは出来ませんのでご了承ください」
「分かりました」
「それでは良い人生を」
「あの、僕は…何を注文出来るんですか?」
「少々お待ちください…………はい、え〜お客様の場合、身体的障害が必ず伴いますので、そうですね、基本的にどの職業のセットでも選べますが必ず盲目付きになります」
そこで目が覚めた。
老若男女、人種も違う人々が一列になって受付らしきところに並んでいた。
ちょっと待ってくれよ。つまりどういうことだ。
運命は不可抗力だっていうのか。
いやありえない。
たかが夢に何本気になってんだよ。
ていうかもう起きなきゃ。時計はどこだ。
時計が見つからない。あれ、起きてるよな俺。ちゃんと目は…
「じゃあ見なきゃいいじゃん」
と、お前は言ったんだ。
「嘘だろ……」
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