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感情を持つ人形の話
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作詞 蓮華 |
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わたくしは 生きています
金色の キラキラの髪と
髪とまったく同じ色の 瞳
窓に映ったわたくしは とても儚げ
わたくしは 生きています
ふわふわの体と 赤い毛糸の口紅と
レースとリボンの 豪奢なドレスと
わたくしの足にぴったりの 靴
主人の仕事部屋の 窓から見る景色は
とても美しい
主人がわたくしに話しかけます
しかし わたくしの言葉は 主人には届きません
わたくしの座る 主人の仕事をする机は
昔々 主人が作った
少し古ぼけた 滑らかな机
主人は わたくしを作り出した
わたくしの兄弟姉妹は わたくしの隣に
静かに座っております
わたくしと違い
決して立つことも 歩くことも出来ません
みなさまとても無口で 一言も喋らず
ただ前を向いております
わたくしは 布でした
わたくしは 糸でした
わたくしは ビーズでした
それが 主人の手にかかり
今 こうしてここに居ます
しとしとと雨が降る日
主人は窓を閉め
わたくし達が 湿っていないか
丁寧に見ていきます
ある朝 主人は倒れて
二度と動きませんでした
わたくしは主人から 離れたくはなく
主人の葬儀が終わった後 売りにだそうとする
主人の妹君の手をすり抜け
主人の墓を探します
嗚呼
主人は今 どこで眠っているのでしょう
主人は今 どこの土の中にいるのでしょう
わたくしは 人形です
感情を持った 人形です
わたくしは 主人が大好きなのです
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