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深淵
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作詞 鮫 |
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耳元で気泡が弾ける音がする
いつかのサイダーみたいだとどこか
頭の隅のほうで思った
でもここはあの炭酸みたいに透明ではなくて
どことなく濁っている
それがあたしには気に食わない
もがいてみようとか
一瞬は思ったりもしたかもしれないけど
「もういいや」「充分生きたよ」
なんて 手足はぶらんぶらん
ふと思いついて 右手を頭上に翳して見た
僅かに入り込んでくる光が
あたしの右手に影をつくった
なんかドラマみたい こんな所で死ぬのか
まあ今更もがいても手遅れでしょなんて
どこか他人事で
光はだんだん遠くなっていって
右手の影は消えた
それがあたしには気に食わない
ちょっとムッとして右手で拳をつくる
うまく動かない唇で言葉をつむぎだした
「気に入らない」
こんな死にかた 気に入らない
右手の力は抜けていって 拳はまたパーに戻った
意識はどこか霞がかっていて
ここらが引き際なのか と真っ暗になる前にちょっと
思った
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