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大好きだった嫌いな世界。
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作詞 音影 |
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大きな力と引き換えに
彼等は自由を失いました。
おきてに縛られ、自由に生きることの出来ない身体には
おきてを、せかいを守るための大きな力が宿ります。
彼等は何十年も、何世代もにわたりこの契約に縛られました。
夢を見ることさえ許されず、せかいのために生きるのだと教え込まれ。
ただ、おきてとせかいのために。
それが当然だった彼等は、人を愛せなくなります。
自分は、せかいを守るのだと。
そこに生きる人を守るのだと。
−せかいと人の所為で、自由がないのだと。
彼等はなんども思いました。
この大きな力を使えば、自由が手に入るのではないかと。
そのうちの一人の少年は、贄になる定めでありました。
彼は笑みに悲しみを滲ませて、酷く切ない瞳で言いました。
「俺は、自分から望んで死ぬんじゃない、契約だから仕方なく死ぬんだ」
と。
「俺も、掟につながる者の一人だった」
と。
それは与えられた力を、自らのために使えない少年の
精一杯の抵抗でした。
大好きだったぜ、俺が一番嫌いな世界。
贄に差し出された彼の、最後の言葉でした。
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