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母さんのモンペ
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作詞 黒澤利音 |
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畑の道を走っていった
100点の答案用紙をかかえて
モンペ姿の母さんが 笑って立ってた
僕はうれしくて おおきく手を振った
すると クラスの女の子が
おしゃべりしながら歩いてきた
母さんと二人のところ 見られたくなくって
僕は 麦畑の中 かくれてしまった
母さんのモンペ 嫌いじゃないけど
家庭訪問の日には はかないでおくれ
黙ってうなずいてたけど 気づいていたんだ
どこか寂しい 母さんの横顔
絵が好きだった僕に 500円くれて
クレヨンを買いに お店に走る
250円のやつと 500円の高級品
僕は 250円のやつを ふたつ買ったんだ
バカな子だね あんた いい絵を描きたきゃ
500円のほうを買うものだよ
ちょっぴり後悔したけど もっとがっかりしたのは
そう 間違いなく 母さんの方だった
母さんの料理 おはぎとお煮しめ
三人の姉さん 誰も作れない
お袋の味が 滅びてしまうよ
母さんは 銀歯を見せてゲラゲラ笑ってた
大人になったある日 医者が言った
「お母さんは あと三ヶ月の命です・・」
不死身だと思っていた 僕の母さん
いつのまにか 小さくなっていた
通帳を 僕に渡して
「これで 私の 葬式をだしなさい。」
バカ言ってんじゃねえ 心配するなよ
僕は あの頃のような 子供じゃないんだ
動かなくなった 僕の母さん
煙になって 空にのぼってく
「母さーん!・・・」
叫んでみたけど
夏の風が吹いていただけ
モンペの母さん もういちど会いたい
昔のように 叱られてみたい
「バカだねえ あんた いい歳をして!」
写真の中で 笑っているだけ
写真の中で
ただ 笑っているだけ
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