|
|
|
名残り
|
作詞 ぬんた |
|
この世の名残りに 訪うた
言葉も交わさず すれ違い
我が名も知らぬ あの人を
あの頃の姿で 訪うた
いいえ、初めて紅を引き
着たこともない絹を着て
鬼も歩かぬ夜の街
齢(よわい)重ねし あの人が
ただ黙々と歩み来る
たとえ百年経とうとも
見紛うはずなき その瞳
ふいに現る 我が身をよけた
顧みもせぬ あの人に
無言のままに 付き従う
一千万里の闇夜道
音ひとつ無き 夜の底
ただひたすらについてゆく
一千万里の闇夜道
かような人世(ひとよ)であったなら
なんの未練が残りましょう
しばしと願う その刹那
広い背中がふと立ち止まり
振り返るなり瞳を合わし
たったひとつの言葉をくれた
「憶えているよ」とあの人は
「憶えているよ」とあの人は
わたしの生は報われた
埃にまみれた質草に
埋もれて生きた年月が
今 清らかに澄み渡る
空の果てへと昇りつめ
ひとひら降らす 名残り花
あの人の手の中 消えてゆく
その幸せを誰が知る
終の住処(ついのすみか)の白い部屋
はらはらこぼるガラス玉
|
|
|