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ありがとう
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作詞 あを屋 |
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すきま風が肌寒い
鍵が壊れているのか
扉が閉まり切らない
それは違った
扉が閉まりきらないんじゃない
息をし続けるためには
扉を開けなければならない
わかっていても 扉を閉めたがる僕がいる
吹き込む風を僕は今でも避け続けている
ある晩 君が迷い込んだ
せわしなく動く物音
正直空気が乱れていると感じた
「どうして君はここから出られないの?」
君は詫びる様子もなくそんな事を言う
「外は寒いからだよ」
そっけない返事の僕
「じゃあ何枚も服を着ればいい」
「そういう事じゃないんだ」
違うんだ ただ怖いんだ
まっすぐ人を見るのが怖いんだ
人に非難されるような目に 風にさらされるのが
ただ怖いんだ
しばしの沈黙
「でも、風が好きだって言ってたじゃない」
そう言って部屋から出て行った
なんだよ その口ぶり
昔から知ったような口をしやがって
君は僕のことを知っていたのか
いつから?
僕は君のことを覚えてないのに
いつから?
そのことが頭から離れない
君はもうこの部屋に来ていない
いつからだったんだ?
目だけで扉を見ても返事は来なかった
風が好き
昔はそうだったかもしれない
日々同じように吹かない風が好きだった
その中で風を感じるのが心地よかった
そんな僕も風の一部になって 一緒に遊ぶのが好きだった
君はたしか控え目で それでいて頑固な風を吹かせていたっけ
それで僕が強引に引き込んだったっけ
だいぶ様変わりしたね
人のこと言えないけど
もう一度できるか
扉の目の前で立っている僕がいる
もう一度風に乗れるか
手の震えが痛いほどわかる
「やっと来た」
君は扉の前に立っていた
気がついたら手を引かれて風の中へ
思っていたよりも寒くなかった
「ずっと君に言いたいことがあるんだ」
僕も君に言いたいことがあるんだ
「一緒に言おうか」
二人の言葉が重なり 再び風が吹き始めた
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