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傷つけるということ
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作詞 愛弓歌 |
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厚い雲は大理石のように
冷え冷えとして地平までを覆う
僕は道かどうかすらもわからない
泥濘を踏んで前らしき方向へ進む
色のないモノトーンの世界で
どうして僕だけこんな目にと嘆く
いつか嘆きは「信じる」という曖昧な
燃料へと変わって引き返せぬ旅路を進む
体温を奪う小雨 強く押し返す風
鉛のような疲労感 じわじわと飲み込む眠気
一段と強く足を踏み込んで
ひどく痛んだ体に力を入れる
とうの昔に目的地なんてさ
忘れてしまったと零して笑った
誰かのために傷ついているんだと
悲劇を纏えば少しだけ温かく感じた
勢いを増す雨と 行く手を阻む風
足枷のような泥濘も がさがさと笑う草むらも
味方など誰もいないと知っていて
ひどい無力さに歩みを止めたその時
針のように大理石を貫いて
僕の足元まで届く日差しが
世界で一カ所だけ色を与える
僕の足の下で泥まみれの淡い色の花
信じ続けることで 傷つけてきたものを
ずっと気づかないふりをして 被害者をまとってた僕に
一段と強く光が差し込んで
泥にまみれた秋桜を拾い上げる
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